ご挨拶

身体障害者補助犬法が制定されてからすでに十数年の月日が経ちました。 補助犬をパートナーとする方々の社会参加をするべく作られたこの法律ではありますが、まだまだ社会的認知度が高いとは言い切れず、各地において様々な施設の受け入れ問題が依然として報告され続けています。日本身体障害者補助犬学会は、このような国内の実情に対して現状の問題調査を実施したり、医療的補助手段としての犬の有効性を示したりしながら学術の面から受け入れ体制の改善を図るために設立されました。補助犬を活用するという営みは実に学際的な作業であります。人間の医療や福祉、受け入れ社会の調整と啓蒙、そして言うまでもなく犬という動物の医療や福祉、各分野の専門家がかかわらなければ実施することはできません。しかし日本の社会は様々な面において縦社会であり「学際的」な事業がなかなか進展しないという特徴も抱えています。当学会ではお互いに専門分野の垣根を乗り越えて補助犬をパートナーとし社会参加を試みている方々を支えたいという学識経験者が一堂に会することができる場を提供しています。
今回は第10回の大会となり一つの節目を迎えたのではないかと考えております。
テーマは「補助犬の福祉を考える:幸せな使用者を支える幸せな犬たち」とさせていただきました。
WHOがワンヘルスという言葉を定着させ、人間と動物の健康はつながっているという考え方を普及させるに至りましたが、現在はその延長線上でワンウェルフェア、すなわち福祉は一つ、という考え方が世界的にも普及し始めています。動物の福祉という言葉は愛護運動などと同一視されてきましたが、そのような狭い範囲で検討されるべきものではありません。人間のために動物を働かせることは虐待であると主張する愛護家がいる反面、かわいい、かわいそうという感情で語られるのは心外であると主張する育成団体がいるのです。両者が納得できる福祉の概念とは何かを冷静に語ることができる場も少ないのではないでしょうか。今回は人間と動物双方の福祉が守られなければ補助犬事業は決して成功することはないであろうというところに焦点を当てシンポジウムの企画を立てさせていただきました。

皆様のご協力をぜひお願申し上げます。

日本身体障害者補助犬学会第10回学術大会 大会長
一般社団法人日本聴導犬推進協会副理事長
特定非営利活動法人日本補助犬情報センター副理事長
山﨑 恵子